ドラゴテールアドベンチャー
第六話 『ゴースト島の守護者達』


作者名:カイル


「……これが、ゴースト島……」

 そこについた第一声が、それだった。
 見事に、誰もいない。
 島についたとたん、ゴースト達との戦闘になると思っていたボクとしては、意外であった。

 その島には、一つの町を挟んで二つの城があった。
 町や城は、荒廃してしまっているが、それでも丈夫な石造りのせいか、原型はとどめている。
 これならば、しばらくここに住んでもよさそうである。
 幸いなことに、すぐ近くに森があり……そこに、沢山の動物達が住んでいた。
 なぜ、この島に人が住まなくなったのか、理由がわからなかった。

 ともあれボク達は、ここでしばらく、快適(重要)に過ごすために、動き始めた。
 まずは二手に分かれて(ボク・小夜・柚ちゃんチームとマール・ベネチーム)食料を、できるだけ集めることになった。
 ボク達は東の森を。マール達が西の森を。
 と、言うわけで食料集めに精を出している、まさにそのときだった。
 正直、それがくるとは思っていた。思ってはいたのだが……それの姿に、ボクは唖然とした。
 それは、喩えて言うならば……いや、喩えて言うまでもない。まさに、それは『おばけ』だった。

「きゃ〜〜〜〜!」×2

 でも、それが出現したことで悲鳴を上げるものが二人……
 んでもって、ボクの後ろに隠れる。
 ……あれの、どこが怖いんだろうか。あんな、白い布に顔のような穴があいていてその中身に薄らと光る何かがある程度だって言うのに。

「そりゃ!」

 掛け声と共に、炎の矢を生み出して攻撃する。
 炎の矢に貫かれたそのお化けは、あっという間に消えていった。
 何なんだよ、あのふざけた奴は。もしかして、あんなのが『ゴースト』なのかなぁ?
 と、思っていたら……またまた、『ゴースト』が現れた。
 今度のゴーストはスケルトンと、ゾンビ。
 まぁ今さっきのお化けよりは、ヴィジュアル的にはまだましだ。

「……ゴーストって、こんなのなのか?」

 呟き、炎を放つ。
 正直言って、ゴーストと聞いたとき始めに思い浮かべたのは…確かにこんな奴等だった。でも、マールの話を聞いて『そうじゃないのかな』と思い直した。だけど……結局はこんなのなのかぁ!
 ボクは出てきたゴースト達を一掃して、再び食料集めに戻った。

「それにしても二人とも……あんなのが、駄目なの?」

 その言葉に、小夜も柚ちゃんも固まり……頬を、赤らめながら、否定をはじめた。

「あ、あんなのだいじょうぶだもん!」
「苦手なんかじゃありませんよ! そうです!そうに決まってます!」

 ……どう考えても、嘘だとわかる応えだった。
 まぁ、別にいいんだけどね。

「まぁ、どうでもいいや。さ、町のほうに行こうか。寝床とか、ちゃんとしておいたほうがいいからね」

 ある程度食料を集めたボク達は、あらかじめ決めておいた部屋に、向かった。
 離れていたらいざというときに危険、という意見が出て、同じ部屋に五人が寝る、ということになった。そのために広い部屋があるという理由で、城の一室……と、言うよりも元謁見の間を拝借することにした。
 無論、小夜を除いた四人は交代で見張りの任に付くことになるけど。
 部屋についたけれど、マールとベネはまだ帰ってきていない。まぁ、あの程度のゴーストにやられるはずはないだろうから、心配する必要なんてないけどね。

「ほい」

 石造り故に、炎を放っても火事にはならない。
 と、いうわけでボクは、その部屋の中心に火を焚いた。
 緋色の炎が、部屋に暖気を充満させた。
 マールの呼び出した水場、ボクが起こした炎、そしてみんなで見つけてきた食料。
 これにこんな立派な部屋があれば、2〜3週間どころか、数ヶ月はここで過ごせる……気がする。

「じゃあ、私が食事の準備をするね」

 小夜がそう言って、三人で集めてきた食料に手を伸ばす。
 護身用なのだろうか。一本のサバイバルナイフを手に、彼女は調理の準備をはじめた。

「あ、ボクもてつだ……」

「お兄ちゃん。私がやるよ。私、お兄ちゃん達と違って……戦えないし、役立たずだから。だから……せめて、こんなときは役に立ちたいの。だから、ゆっくり休んでて」

 ……小夜が、そんなことをいうなんて。
 そういわれても、落ち着かない。確かに城や、町の中にはゴーストは入ってこれないようだけど、こんなときに悠長に散歩なんでしていられない、気がするのだ。

「……そうですか。でしたら更夜さんは、散歩に行って気ばらしでもしてきたらどうですか? 何かあったときのために、私はここにいますから」

「え、そんな。柚ちゃんこそ、散歩にいってきたらどう?」

 でも、彼女はボクの言葉に首を振った。

「私は、エーアデではさほど力を使っていません。それに比べて更夜さんは、力を使っているほうです。ですから、ここは私に任せて、休んでいてください」

「いや、それでもボクは……!」

 そこまでいったとき。
 何かを、感じた。

「ッ!」

 剣を構え、その気配のした方向……玉座に向かう。だけど、その方向には誰もいなかった。
 ……なんだったんだろう、今の。
 剣を鞘にしまいながら、ため息をつく。

「お、お兄ちゃん……いきなり、どうしたの?」

「そうですよ。いきなり剣を構えたりして、どうしたんですか?」

「……柚ちゃんは、何も感じなかったの?」

 同じ、龍騎士なのに……?

「はい。何も感じませんでした」

 おかしいな……

『更夜。お前の感じたものは、私も感じた。間違いなく、何かいるぞ。この城には』

 何かって、何が?

『私にわかるはずないだろう』

 御尤も。

『だが、別にこちらに危害を加えるつもりはないようだしな。こちらに手を加えてくるまで、待つか』

 ……フレイアはそういうけど、待っているだけというのも暇である。
 小夜の様子からして、手伝うこともできないみたいだし。

「じゃあボク、散歩にいって来るよ」

「うん。いってらっしゃい」

 小夜の言葉を背に、ボクは謁見の間を出た。
 そして、城のいたるところを調べてみた。
 無論、一人で調べるには城は広すぎるので大雑把に調べただけだったけど……わかったことが、幾つかある。
 一つ目。誰かが、最近までここで過ごした後があること。しかもそれは、複数の人物だということ。これは焚き火の跡と、食べかけの果実……しかも、腐っていない奴が、落ちていたことでわかった。
 二つ目。一見ぼろぼろだけど、なぜか手入れがしてあること。その証拠に、ドアは錆びておらずにあっさりと開くし、埃もない。
 三つ目。これが一番重要なんだけど……誰かの、気配がした。気を配っていて、やっと気付くぐらいのレベルで。
 まぁ、それらがわかったからといってどうなるモンでもないけれど……
 その人物達が何者なのかはわからないけど。敵対していないんだったら、かまいはしない。
 調べがあらかた済んだボクは、そろそろ食事時だろうということで小夜達の待っている場所に戻った。

「お。帰ってきたか」

 帰ってきたボクをまず迎えたのは、肉の実を炙っているマールの言葉だった。
 程よく焼けているらしく、いい匂いが部屋に充満している。

「お帰り、お兄ちゃん」
「お帰りなさい、更夜さん」

 いったい何があったのだろうか。
 小夜と柚ちゃんは、同時にそういったあと、互いを睨んだのだ。
 ………訊くの怖いから、やめとこう。

「まぁ、女五人って言うのも、少し危ないな」

「危ないって、襲う人いないじゃん」

 別の……というより、本来の意味で襲うかもしれない奴等は潜んでいたりするけど、言うまでもないので黙っておくことにした。

「わからんぞ……俺も更夜も、もともと男だからな……むらむらと来て、この状態のまま襲ったり……」

 あのね……

「え、フレイもマールも元男だったの? あたしもだよ」

 その言葉に、ボク達の視線は一気にベネに集まった。
 そして、驚愕の声が次々と上がる。
 といってもボクは……少し、可能性として考えていたから、さほど驚かなかったけど。

「まぁ、あたしが龍騎士になったのは半年ほど前だし。女の子ってのも、楽しいし。すぐ慣れた」

 な、慣れるモンなのかなぁ。
 ボクも、この状態のままいたら慣れちゃって……いや、もう既に慣れちゃているかもしれない。
 なんたって、女の子のまま過ごしていても、なにも思わなくなってきている!
 恐ろしい……これは恐ろしい……

『まぁ、あとはお前の気配り次第だ。がんばれ』

 そんな……無責任な事言うなよ、フレイア。
 事実なだけに、悲しいものがある……

「……じゃあ訂正だ。俺も更夜もベネも元々……」

「んな事言いなおさなくてもいいじゃん」

 ボクは言ったけど、あらら……小夜も、柚ちゃんも黙っちゃったな。
 ちょ〜っと頬が赤いけど、まぁ今さっきのような話を聞いていたんじゃ、仕方ないかもね。

「ん……と。ちょっとボク、出かけてくるよ」

「ん? どうした。まさか……なんかの気配を?」

 真剣な顔をして、訊いてくるマール。
 だけれど、ボクが出かける理由ってのはそんな大層な理由じゃない。

「んと……ちょっと、トイレに……」

 途端、拍子抜けするマール。
 勝手に勘違いしたくせに。ほら、ほかの人なんてそれほど驚いてないじゃんか。

「じゃ、行って来る」

 と、言うわけでボクは……城の外まで、用を足しに行ったのだった。
 ……これが初めてってわけじゃないけど……う〜〜〜ん……

 

 

 ふぅ。すっきりした。
 それにしても。夜の森って、不気味である。
 実際にゴーストも出るし。それにこのゴースト達……暗いところで見ると、結構不気味である。
 強さが変わるわけじゃないから、炎の矢を発して撃退しておいたけど。

「それにしても夜の廃墟をぶらつくってのも、怖いもんだね」

 ボクはそう呟いた。
 フレイアに話しかけるのは心の中で十分なんだけど、小声だろうと声に出したほうが考えがまとまりやすいので、声に出しているのだ。
 どうせ、見ている人なんて誰もいないんだし。

『お前ほどの力があれば、怖いというものではなかろう』

「それにしても、どう思う? なんかいるの」

『うむ。この町に住んでいた者の生き残り……または、この地を何らかに利用しているもの……』

 うん。確かにそうだ。
 でも、まだ可能性は残っている。

「ボク達と同じように、一夜の宿を求めて、っていうのはないかな」

『だとすれば、係わり合いにならなければいいだけだ』

「その通りなんだけど。あっちが、そうくると思う?」

 返事は、こない。
 だけどボクの言葉を肯定しているってことは、わかる。
 フレイアがボクの考えをわかるように、ボクもフレイアのことがわかるのだ。

「まぁ。あっちからしかけてきたら……そのときに、反撃すればいいよ。あっちがしかけてこなければ、こっちだってしかける理由なんてないんだし」

『まぁ、それが妥当だな。それにしても更夜。お前は、現在この場にいる四人の中で、誰が一番好みだ?』

「はい?」

 唐突な話題変更に頭がついていかず、フレイアが何を言っているのかが、わからなかった。

『たとえば小夜。優しくて、可愛い奴だ。スレンダーな上に、男の保護欲をくすぐるところが、たまらん』

「フレイア……親父みたいだよ」

『次にマールだが…男言葉を使ってはいるものの気さくで、活発系。女友達に最適だな。しかもスタイルは抜群だ』

「いや、だから……」

『柚は巫女らしく、凛としているしな。ああいうのは、結構押しの強いほうだぞ』

「……」

 フレイアはもう、聞く耳を持たない。
 だからツッこむのはやめにした。

『ベネはベネで、魅力がある。胸なんかは小さいが、そっち系の趣味のある男ならば放っておかないだろうな』

「で、結局何がいいたいの?」

『だから、お前の好みだ』

「……まぁ、どうでもいいよ。ボクの好みなんて」

『何を言う! それを知りたがっている人が、どれほどいると思ってんだ! せっかく魅力的な女子が四人もこの場にいるっていうのに……』

 いるのか、知りたがっている人なんて。
 って言うか、フレイアは誰に向かっていっているんだろう。

「だから、どうでもいいって。……話を元に戻すけど、潜んでいる奴等。出てくると思う?」

『……ああ。でないとこう頻繁に、近寄られるなんて事はないからな』

 うん。
 もしその相手が、ボク達のことを『敵』とみなしたのなら……戦わなければならないかもしれない。
 龍騎士の力で。

「……あれ。フレイア、あれ……なんだと思う?」

 今までは気付かなかったけど、建物の入り口にロープが張ってある。
 その先を見てみると、鳴子らしきものが見つかった。
 ロープも、鳴子もまだ新しい。

「……わざと、引っかかってみるかな」

『やめとけ。自分から首を突っ込むことはない』

 ま、そうだね。
 だけど、まだ気になることが、幾つかある。
 ……それに。もう片方の城も、ボクは調べてないのだ。
 明日調べればいいんだろうけど、生憎ボクは「やりたい事はやりたい時にやる」という考えの持ち主なので、今あっちを調べたいと思ったら、調べなければ気がすまないのだ。
 と、言うわけでボクは小夜たちがいる城とはまた別の城に向かって、歩みを進めたのだった。





 お兄ちゃん、遅いな……
 肉の実、魚茸もおいしく焼けたのに。

「……小夜さん」

 ふと、声がしたのでそちらのほうに目をやった。
 声の主はわかっている。私のことを、「小夜さん」というのは、一人しかいない。

「私、負けませんから」

「私も、負けないもん!」

 第三者が訊いたら、まったくわけのわからないだろうこの言葉。
 そう、それは……お兄ちゃんが散歩に出かけたときのことだった。
 突然柚ちゃんが私にこう言ってきた。

『更夜さんのことを、どう思っているんですか』

 私は、思わず言葉に詰まった。
 だって……言っちゃったら、兄妹なのに……そう、思っているって事がばれちゃうもん。
 黙っていたら、今度は柚ちゃんは……

『私、更夜さんのことが好きです』

 ……そう、言った。
 理性より先に、本能がそれを否定した。そしてその否定は、口から放たれた。
 『駄目!』という、言葉で。
 その先は、どんな言い争いをしたのかは覚えていない。
 ただ、お互いに……お互いのお兄ちゃんへの気持ちを伝えはしない、というのと……気持ちを伝えるときは、必ず面と向かって伝える、ということを、心に決めた。

「……」

 でも。私……お兄ちゃんに、自分の気持ちを伝える勇気なんて、ないよ。
 ……でも、でも! お兄ちゃんを、柚ちゃんにとられたくない!

「……さ、小夜。怖いぞ、お前」

 マールさんにそう言われ、はっと我に返った。
 そ、そう言えば……ずっと考え事をしていて……顔を、しかめちゃってたかもしれない……

「……それにしてもフレイ、おっそいな〜。おっきいほうかな?」

 ううん。
 お兄ちゃんは散歩に行く前に、何かの気配を感じたみたいだった。
 何の力も持たない私にその気配を感じることはできなかったけれど、お兄ちゃんはきっとそれを探っているんだと思う。
 だって、お兄ちゃんはそう言う人だもん。

 お兄ちゃんの分の食事を、ほかの人に取られないようにとっておく。
 早く帰ってきてね、お兄ちゃん。




「…ははぁ。こんなところに、隠し階段……」

『割と、ありがちな隠し階段だな』

 朽ちてぼろぼろになった玉座をどかしたら、その下に隠し階段があったのだ。
 ありがちといえばありがちだ。
 もしかしたら、あちらの玉座にも同じ仕掛けがあったのかもしれない。それならば、あのときの気配にも頷ける。

「……フレイア。下に、何があると思う?」

『ふむ。王族がなにかあったときのための、逃走用通路。または、王族しか入ることのできぬ、神聖なる場所。考え方は、いろいろとある』

「そりゃそうだけど。まぁ、進んでみればわかる……」

【そこのもの! それ以上進むべからず!】

 突如、部屋に響き渡る声。
 反響したような声で、声の主がどんな人なのかはわからない。

「何者だ!」

【そこから進めば、我が怨念があんたを襲うだろう!】

 ……怨念……

『……どうした、更夜。怨念が怖いのか?』

 いや、そうじゃない。
 むしろ今の言葉で、先に進むことを決意した。

 進もうとすると、更なる罵倒がボクに降りかかる。
 でもそれを無視し、ボクは階段を降りた。
 階段を降りていっても、罵倒はやむことはない。聞くに絶えない言葉ばかりである。
 でも、その罵倒を耳にしていて、これは怨念なんかじゃないな、とボクは確信を持った。
 言葉にひねりがないのと、言葉遣いの悪さ。そして言葉の使い間違い。
 総合すると、この声の主は歳は高くない。
 ……追記。というより、こっちのほうがメインなんだけど。
 声が、ボクの後方から聞こえてくるのだ。
 反響してはいるけど、声の方向はちゃんとわかる。
 何者なのかはわからない。複数、いるのかもしれない。
 いざとなったら、壁を破壊して逃げて、マール達に応援を頼む。
 よし、これで行こう。

 ……思ったより早く、開けた場所に着いた。
 二つの像が向かい合っている。
 そしてその二つの像は、龍をかたどられていて、片方は白。もう片方は黒い色を、していた。
 まさか、ここは……

「……清廉なる神龍の間を汚すものに、鉄槌を!」

 声と共に、誰かがボクを襲いかかる。
 とっさに双剣で受け止める……が、ボクはその声の主の姿を見て、驚いた。
 まだ、小学生低学年といった年恰好。
 その彼女が、ショットガンを手に殴りかかってきたのだ。
 普通は、それをぶっ放すと思うんだけど。

「今からでも遅くはない……ここから去るというのなら、私も手は出さない。さぁ、すぐにこの島から出て行け!」

「ち、ちょっと待ってよ! 2〜3週間あたり、この島に滞在させてくれるだけでいいから!」

「だめ!」

 取り付く島もないとは、この事なのか。
 白銀に輝く髪、そして眼。服は少し汚れているものの、上質なものだということはわかる。

「世界の状況を知らないわけじゃないんでしょ!? ボク達は仲間と会うために、ここで待ち合わせをしているんだ!」

「世界の状況だかなんだか知らないけど、この場所は守る!」

 駄目だ。
 聞く耳持たず、って奴である。

「ほら、ナツキ! あんたも加勢しなさい!」

「う……こ、この場所に手出しをしないんだったら、いいんじゃないかな……」

 もう一人、いたのか!?
 そう言いながらおずおずと出てきたのは、銃を持った女の子と同い年ぐらいで、彼女とそっくりの、女の子だった。でも、髪の色も眼の色も、銃を持った女の子とは違って、黒だ。

「ナツキ……あんた、まだそんな甘ったれたこといってるの!?」

「ほ、ほら。その人だって、別に悪気が合ったわけじゃないだろうし……」

「ナツキ!」

 名も知らぬ少女が、ナツキという少女を睨みつける。

「ちょっと待った。こっちの知らないところで話を進めないでくれよ。聞けば、ここは神龍のいる場所なんだってね」

「な……あんた、どこでそれを!」

「……カリンが、自分で言ったんじゃないか」

 ナツキがカリンに、ツッこみをいれて……睨まれた。
 ナツキはヒッと言い、後ずさり。

「……だったら、ボクと戦う理由はないはずだ。ボクは龍騎士フレイ。赤の神龍の力を得た、龍騎士だ」

「嘘ね。だいたい、なんで龍騎士がこんなところに? どうせ、嘘をついて神龍の力を奪いに来たんでしょうが、そうはいかないわ!」

 信用、しなかったか。
 龍騎士という単語で、こっちの話を聞いてくれるようになればいいな、という希望を持っていたんだけど。
 どうやら、駄目だったらしい。

「カリン、話を聞くだけでも……」

「駄目よ! 私達は、帰るんだから。こんな、わけのわからないゲームの世界なんて、こりごりよ……」

 わけのわからない、ゲームの世界?
 まさか、彼女達は……

 だが、ボクが問いかけるより早く、カリンは動いた。銃身をボクに向け、引き金を引く。
 白い軌跡を描きながら、高速でその弾はボクに迫る。
 だけど……『龍騎士』の身体能力、動体視力を使えば、迫りくる弾を目で見て、避けることはできる。
 身体をひねり、その弾を避けるが……次の瞬間、光がボクを包んでいた。
 それは、光の檻というにふさわしいものだった。

「ふふん。その中に閉じ込められて出てこれる奴は、そうはいな……」

 ……いや、そう言われても。
 ちょっと力を入れたら、壊れちゃったんだけど、この檻。

「カリン〜」

「だ・ま・り・な・さ・い!」

 情けない声で名を呼ぶナツキを、カリンが叱咤する。
 ナツキはやはり、物陰に隠れてしまう。

「人の話は聞いたほうが言いと思うよ」

 親切な忠告のつもりだった。
 だけど、その言葉が彼女の火に油を注いじゃったらしい。
 顔を真っ赤にさせて、こちらを睨みつけている。

「……どうでもいいけど。そっちの……ナツキって言ったっけ? カリン止めるの、てつだってくんないかな」

「え……えええ

!」

 彼女は、かなり驚いている様子である。
 まぁ、そりゃそうだ。仲間をとめるのを手伝ってくれと、その仲間が敵視している奴から言われたのだ。

「ナツキ! 奴の言うことを聞いちゃ駄目よ!」

「……緋村更夜。ボクの本当の名前だ。これがどう言うことか、わかるんだったら……この戦いが、どんなに無意味か、わかるでしょ?」

 だけど、カリンはわかっちゃいなかった。ただ、目の前のボクを討つことを考えている。
 しかし、ナツキは違った。彼女は、わかっているはずだ。彼女の、ボクに対する敵視が、どんなに無意味かということが。

「カリン! わかんないの!?」

「うるさいうるさいうるさ〜〜〜い!」

 カリンは、体の周りに光球を大量に生み出した。そしてそれが、銃身へと集中する。
 やれやれ。ここは、少しぐらいお仕置きをしておいたほうが、よさそうだ。

「やれ〜〜〜〜〜!」

 掛け声と共に、銃身から大量の光球が、勢いよく発射された。
 今さっきのように、すべてを避けきることは……不可能ではないけど、難しいだろう。
 でも、別に避ける必要なんてない。あの程度なら。

 ボクは目の前に、炎を呼び出した。
 そう、炎の壁を。
 カリンの放った光球は、その炎の壁に阻まれてボクにあたることはなかった。
 その代わりに、粉塵があたりを覆う。
 粉塵は視界をさえぎる役目を果たす。

「ふふん。どう? 龍騎士なんて、嘘をついた罰よ」

 いや、生きてるし。
 ボクは粉塵の中を、相手の気配だけを探り、背後に近寄った。
 ボクを倒したと思い込んでいるせいで注意が散漫になっているのか、彼女の背後を取るのは、さほど難しいことじゃなかった。
 背中に指を当て、それをしたまでつ〜っとなぞってやる。
 すると……

「ひゃわわわわわわわわ!」

 ……ここまで反応するとは。予想外である。
 まぁ、いっか。
 ビックリしているようだし、当初の予定通りっと。
 森で拾った蔓をポケットから取り出して、まずは腕を縛り、次に足を縛り。さるぐつわをかませてっと。

「ナツキ。暴れないように、彼女を押さえてくれないかな。ボクがやるとどうも暴れて仕方ないから」

「あ、はい」

 そういって、ナツキはカリンを背後から押さえる。
 暴れることに変わりはないけど、ナツキはカリンの弱いポイントを知っているのか、首筋だか背中だかをこしょぐって、動きを止めた。

「じゃあ、まずは自己紹介から。ボクは、今さっきも言ったけど……赤の神龍から力を受け継いだ、龍騎士のフレイ。本名は緋村更夜って言うんだ」

「あ、あの。神坂夏麒っていいます。夏麒は、季節の夏に…麒麟の麒で、夏麒。それで、こっちがボクの双子の姉の、神坂夏麟。やっぱり季節の夏に、麒麟の麟で、夏麟っていいます」

 夏麒がそう言って、説明をする。
 それにしても、彼女達の名前って難しい漢字だなぁ。よく、この年でそんなのわかるなぁ。
 ぴくぴく夏麟が動いているけど、無視無視。

「うん。やっぱり、君達も……あっちの世界から?」

「はい。フレイさん……更夜さん?」

「どっちでも、好きなほうで呼んでいいよ。それで、どうして、こちらの世界に?」

 彼女は、しばし考えた。
 そこで、頬を桜色に染める。

「あ、あの……ボク達、龍騎士なんです……白と、黒の……」

 …………………………………………………

「それで……あの。ボクは、本当は……」

「あ、それ以上は言わなくていいよ。ボクも同じだし」

「そ、そうなんですか……」

 しばしの沈黙。
 もっとも、その沈黙の間にも夏麟は暴れていたけど。

「………ところで。夏麒って呼び捨てにするのもあれだから、夏麒君って呼ぶことにするよ」

「あ、はい。フレイさん」

「うん。そして、幾つか聞きたいことがある。まず始めに、君達は誰によって呼び出されたの?」

 そう。
 それが、ボクは聞きたかった。
 どうも夏麟という娘は、こちらの世界を嫌っているようだ。
 なのに、龍騎士としてこちらに残りつづけている。龍騎士の力を得たことを黙っておき、何の反応もなかったとか嘘をつけば、帰れたはずなのに。

「誰に……そう……ボク達を呼び出したのは、何人かの老人達。そしてその人達は、ボク達に命令したんです。この場所を守れ。龍騎士としての使命を果たせ、って」

 龍騎士としての、使命?
 フレイア、そんなものあるの?

『ない。所詮龍騎士とは、我等の力を具現するためのものだ。もっとも、その力の使用は龍騎士に委ねられるがな』

 そう……

「……それで。その、老人達って、どこにいるの? 会って、話がしたい」

「……やめておいたほうがいいですよ。あの人達、怖いし……」

「それは、我等の事かな?」

 突如、声が響いた。
 しわがれた声が。
 振り向くと、そこには六人の老人がいた。
 赤、青、緑、黄、白、黒の衣装を身に纏った、司祭のような老人だ。

「下賎が、この場所に来ていいものではない」
「この場所は白と黒の神龍が封印されし地」
「神聖なる部屋だ」
「今すぐこの地を離れよ」
「でなければ、貴公に災いが降りかかる」
「我等、六賢者……神龍の声を聴きし、賢者なり」

 そう言われても……
 こっちは龍騎士なんだけど。

『更夜……少し、声を借りるぞ。ああ言う思い上がった奴等を見逃すほど、私は性格はよくないからな』

 正直言って、ボクも同じ意見だ。
 何が、神龍の声を聴きし賢者だ。
 幻聴か、さもなくば他のものの声。仮に神龍の声を聴けたとしても、神龍から力を借りることのできない半端ものだろう。
 それを、偉そうにして……

 うん、フレイア。許す。

『感謝する』

 フレイアはボクに一言言ったあと、声の主導権をボクから、フレイアへと移した。

「なにをいう。私は赤の神龍。龍騎士・フレイの身に宿る神龍だ」

「なにをいう」
「赤の神龍だと? 出鱈目を」

 赤と青の服を着た老人が、自嘲気味に嗤う。
 だが。

 目の前に現れた、炎が……その嗤いを奪った。
 炎は天井へと上り、爆発を引き起こす。
 爆音と共に、火の粉があたりに散らばり……消えていく。
 頭にきたが、脅し程度にとどめてある。
 まだ、話し合いの余地は残っているはずだから。

「出鱈目と頭から決め付けるか? 頭の硬い、賢者さまだな」

 さすがにその言葉には腹が立ったのか、老人たちの顔に血が上っていく。

「おじいさん達……やめようよ。なんで、ほかの人を下賎だとか言うの!? 同じ人間なんだから、下賎も高貴も、関係ないと思うんだ……」

 夏麒の訴えは、意味をなさなかった。
 既に彼ら老人達は、聞く耳を持たない。

「これは夏麟にも言ったことだけど……人の話は聴いたほうがいい。自分が選ばれたものと勘違いして、人を不幸へと陥れるのは……赦せない」

 過去を、思い出し……
 ボクはその言葉を告げた。

 フレイア。君を、この場に出す。
 ……この、神龍の封印された部屋なら、それができるでしょ?
 ボクの目の前に、初めて姿をあらわした……あのときのように。

『ああ……それで、奴等が納得するかはわからないがな』

 うん。
 それは、わかっている。

 ボクは夏麟を縛っていた蔓を切り裂いた。

「夏麒。夏麟を連れて、ボクの仲間のところへ。……2〜3週間もすれば、この世界に詳しい人がくる。そうすれば、君達はもとの世界に戻れるはずだ」

 白と黒の龍騎士が、もとの世界に帰るというのはあれかもしれないけど、大事なのは本人の意思だ。
 やれるだけの力があったら、それをやったほうがいい。でもそれは、やろうと思う意思があって初めて成立することだ。やる気のない者に何をやらせたところで、何もできるわけがない。そしてボク達が進もうとしている道は、負けは死につながる道だ。
 そんな道に、望んでもいない彼女達を渡らせるわけにはいかない。

「……この人達は、穏便に話をつけるよ」

 どの道、あの老人たちには攻撃手段はないはずだ。
 今さっきのボクと夏麒の会話中に攻撃をしかけてこなかったのが、いい証拠だ。

「夏麟。何度も言うけど、人の話は聴いたほうがいいよ。そして、そこから情報を得て……自分の進むべき道を見つけるんだ。これは、この世界でも、もとの世界でも。同じ事が言える。……じゃあ、またあとで」

 夏麒は頷き、夏麟の腕を引っ張っていった。
 夏麟は最後に、こちらに向けて申し訳なさそうな顔をしていたから、わかってくれたんだろう。

 さて、と。
 ボクは、老人たちに向かい合った。
 向かい合って、二本の剣を宙に投げる。
 老人たちは少し後ずさりをしたけど、それが攻撃のためではなく、何の意味もないと悟ったのか、一歩踏み出す。

「・・・・・・な!」

 何かを、口にしようとしたかもしれないけど、驚きにその言葉は飲みこまれる。
 二本の剣は螺旋を描きながら赤く染まる。
 そして、二つの剣はぶつかり合った。
 ぶつかった際の、音はない。変わりに、無音の威圧感が場を支配する。

 老人たちの視線の先にあるのは、剣ではない。
 龍だ。
 ボク自身もはじめてみる、フレイアのドラゴンバージョンだ。

「愚か者どもよ……私は赤の神龍。さぁ、何故私の言葉を否定したのか。応えよ」

 降りかかる威圧感。
 それに押されたのか、老人たちは無言だ。
 血の上っていた頭から、一気に血の気が下がっていくのが、傍目から見てもわかる。
 もう、彼らの顔は真っ青だ。

「ふむ。応えられないというのか? ならば、炎の鉄槌によってその身を焦がすがいい」

「お、お待ちください神龍様!」

 神龍様、ときたもんだ。
 ボクの口から出たフレイアの言葉には、耳も貸そうとしなかったくせに。

「ふむ? では待とう」

「わ、私達は選ばれたものです。神龍に遣える司祭として……」

「私達神龍が選ぶのは龍騎士だけだ。司祭? だから何なのだ? お前等が本当に神龍に遣える司祭だというのなら、その証を示してみろ」

 言われ、言葉に詰まる賢者たち。
 当然といえば、当然かもしれない。
 彼らは所詮、宗教とかの上に立つものであり、本当に神龍とコンタクトがとれるわけはないし、神龍に遣える司祭の証拠を出せ、といわれても人間内でしか通用しないものしかないのだろう。

「……では、もう一つ聴く。彼ら……白と黒の龍騎士の素質のあるものを呼び出し、龍騎士にさせたな。それだけならまだいい。だが、その力を使う権利があるのは龍騎士であって、お前等ではない。それなのに、なぜ彼女たちを元の世界に帰さない。彼女達が帰りたいというのであれば、帰らせてあげるのが道理だろう?」

「し、しかし! 龍騎士は神龍を守るもののはず! ならばここを守らせるのがその役割なのでは!」

「その考え方は間違っているな。私達神龍は龍騎士の心に宿る。そして龍騎士は神龍の力を具現化させる力を持つ。そしてその力の使用権利は、龍騎士に与えられたものだ。人にどうこう言われ、命令され、使っていいものではない。本人が、それを望まぬ限りな」

「そ、それでも!」

 それでも……?
 何が、それでもだ。
 自分達の身勝手のために呼び出し、帰さないなんて。
 それが、あの子達にどれだけの傷を与えるかもわかりもしないで。

「……君達、最低だよ。それに、あの二人の様子じゃ世界の状況なんて教えてないんでしょ? それ以前に、君達が世界の状況を知っているのかさえ疑問だよ。あの二人はまだ子供なのに……なのに……なのに!」

 手の平の上に、火球を生み出す。それはおよそ、バスケットボールぐらいの大きさだ。
 ボクはそれに、さらに力を注いだ。火球が大きくなっていく。
 やがてそれは、直径五メートルはあろうかという大きさになった。

「更夜! やめろ!」

 だれかが何かを言っている。
 だけど、何を言っているのかはわからなかった。
 子供が……どんなに傷つきやすいかを知らない奴等……
 そしてそれは、消えない傷として残る。
 赦せない……赦せるわけがない!

「死ね……」

 火球をぶちかまそうと、腕を動かそうとする。
 だけど……動かせなかった。
 彼らを守るようにして立ちはだかった人が、いたからだ。
 彼女は両手をこちらに向けている。そして彼女と老人たちを守るようにして、ドーム状のシールドが張られていた。
 ボクは、心の中で彼女の名前を呼んだ。
 小夜……

「お兄ちゃん……話は、聴いたよ……」

 小夜が、こちらに歩み始めた。

「……お兄ちゃん、優しいからね……あの二人のこと、心配したんでしょ? 私達のように、消せない傷ができないかって」

 小夜は、ボクの目の前でとまった。互いの吐息が、聞こえるぐらいに近い場所に。
 ……ボクは、掲げていた火球の熱を下げ……四散させた。
 人間に、何の害もないエネルギーとして。

「でも、だからって……あの人達を倒すのは、間違ってるよ」

 ……………

「お兄ちゃん……本当は、わかってるんだよね? でも、傷ついた心が、それを曇らせちゃったんだよね? 過去の自分と、あの子達を重ね合わせちゃって」

 …………

「私も、赦せないよ。でも、この人達を殺したからって、どうにもなるもんじゃ、ないと思う。……艦に、連れていこう。艦長さんに言ったら、あの子達をリアルワールドに帰せると思うし……」

 ………

「……頭を冷やしてよ。今のお兄ちゃんの顔……すっごく、怖いよ」

 ……ボクは。
 何がしたかったんだろうか。
 わかっていたはずなのに。なのに、なのに。
 脳にフラッシュバックするあの日の記憶。それの、せいなのかな……?

 数回、頭を振って余計な考えを吹き飛ばす。
 大きく息を吸って、吐く。もう一度大きく吸って、吐く。
 数度、それを繰り返した頃には……いつもの調子に、戻っていた。

「ふぅ……小夜には、心配かけてばっかりだね」

「……うん。本当に、心配なんだから……もう、心配させないで」

 潤んだ瞳に、ボクが映っている。龍騎士の少女だろうと、かっこ悪く、情けないボクの姿が。
 ボクは小夜の頭を撫でながら、

「うん。約束する。できる限り、心配かけないことを」

 そう、いった。
 だけど小夜は少し頬を膨らませ。

「できる限りじゃなくて、絶対」

 という。
 頬を膨らませていても、彼女の目は真剣そのものだ。
 ぷッ……
 その頬の膨らみと、真剣さが妙にアンバランスで、思わず、噴き出してしまう。

「むぅ。どっか、おかしいところでもあった?」

 彼女は眉をひそめ、そう言う。
 眉間にしわがよって、それがまたおかしかった……が、言葉には出さないことにする。

「いや、ないよ。ところで小夜。どうして、こんなところに?」

「……夏麟ちゃんと夏麒君に案内してもらったの」

「いや、そうじゃなくて……」

 ボクの聞きたいのは、そんなことじゃないのに。

「だって、私……お兄ちゃんが心配だったんだもん。……夏麟ちゃんと夏麒君の話を聴いて……お兄ちゃんだったら、怒っちゃう。そう、思ったから……」

 お見通し、というわけか……
 かなわないな、小夜には。

「フレイア。もう、いいでしょ。彼らにはもう、話す気力もなくなっちゃったみたいだし」

 巨大火球に腰を抜かした老人達が、横たわっている。
 その表情には、恐怖が張りついていた。

 フレイアはボクの言葉に頷くと、その龍の肉体を赤き光と化させた。
 そしてその赤い光は、ボクの体に入ってくる。
 ……フレイア。ちゃんと、いるよね。

『ああ。ちゃんといるぞ。やっぱりここのほうが、落ち着くな』

 そういうものですか。

『ああ、そう言うものだ』

 よし。
 ちゃんと、フレイアも元に戻ったみたいだし。ご飯を食べに、戻ろうかな。

 っと、そうだ。
 最後の仕上げを忘れてた。

「夏麟と夏麒はボク達が連れていく。君達にそれを止める権利は、ないからね」

 老人達にそういったボクは、小夜と共に歩き去る。
 部屋の出入り口で待っていた夏麒君と夏麟が、ボクと小夜を迎えてくれた。

「……えっと、その……話、聴かないで、ごめんなさい」

 夏麟が頭を下げ、謝ってきたので少し驚いた。
 てっきり、ボクを敵視するかと思ったのに。

「あ、うん。わかればいいんだ、わかれば。ところで、二人はやっぱり帰りたいの?」

「はい。宿題もあるし、お母さん達も心配してるだろうし。もう、一ヶ月も家を空けているから」

 あ。どうやら、こちらの世界とあちらの世界の時間の流れは違うって事を知らないんだ。
 教えてあげたほうがいいだろうけど……まぁ、その話はゆっくりとしたほうがいい。
 艦がこの島にくるまで、まだ時間はあるのだ。
 話す時間など、いくらでもある。
 いくらでも。

 龍騎士がこれで六人、全員そろったけど……
 ……彼女達は、元の世界に戻るんだろう。
 それが悪いってわけじゃない。彼女達には彼女達の生きる道がある。
 そしてその道を決めるのは、彼女達自信だ。
 強要して戦わせても、後悔させるだけ。
 これから2〜3週間ほどしか、六人の龍騎士が終結してはいないのか。
 そう物思いにふけりながら、ボク達はマール達が待っている部屋へと急ぐのだった。

 

TO BE CONTINUED


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